《Kim Chang-ok: Traces of Comfort》は、漆という素材を通して、時間、反復、そして待つことが残す痕跡を造形言語へと置き換える展覧会です。本展では、漆を伝統工芸の継承や技術的な完成度という観点から捉えていません。キム・チャンオクにとって漆は、長い歴史を受け継ぐ工芸の伝統というよりも、自身の時間と思考をかたちにするために選んだ表現素材に近いものです。
漆が乾く過程で生まれるしわや収縮、亀裂は、欠陥ではなく、自然と時間が生み出した固有の表情として作品に残されます。作品の表面に幾重にも積み重なる痕跡は、傷や失敗、不安、そして待つ時間もまた、今の自分を形づくる人生の一部であることを示しています。
この20年間、講演というかたちで人々と向き合ってきたキム・チャンオクにとって、言葉はひとつの表現手段でした。本展は、その表現の軸を素材とかたちへと移したものであり、今、彼は展示空間で作品という言語を通して観客と向き合います。